高校卒業後にそのまま働くか、大学に進学するかは、多くの人が一度は悩むテーマです。結論からいえば、高卒で働くこと自体が「人生終わり」や「絶対不利」というわけではありません。実際、高校新卒者の就職内定率は高く、企業側の採用意欲も強い状況です。
ただし、長い目で見ると、応募できる仕事の幅、昇進のしやすさ、年収の伸び方では大卒が有利になりやすいのも事実です。この記事では、高卒と大卒の違いを就職・年収・将来性の3つの視点から整理し、どちらを選ぶと後悔しやすいのかまでわかりやすく解説します。

高卒で働くのは本当に不利なのか
まず押さえておきたいのは、高卒で働くことは今でも十分成立する進路だということです。高校新卒者については、2025年3月末時点のハローワーク求人で就職内定率99.0%、求人倍率4.10倍となっており、少なくとも「仕事がまったくない」という状況ではありません。
一方で、「不利かどうか」を考えるときは、就職できるかだけでなく、どんな仕事に応募できるか、その後どう伸びるかまで見る必要があります。大学卒業者の就職率も2025年4月時点で98.0%と高く、入口そのものは高卒・大卒どちらも悪くありません。差が出やすいのはむしろ、その先の選択肢や昇進・転職市場です。
つまり、高卒が不利かという問いへの答えは、「最初の就職では必ずしも不利ではないが、長期では不利になりやすい場面がある」が最も実態に近いです。極端に「高卒は終わり」と決めつけるのも間違いですし、「学歴なんて関係ない」と言い切るのも現実的ではありません。高卒と大卒は、スタート地点よりも数年後の選択肢の広さで差がつきやすいのです。
高卒と大卒の違いが出やすいのは「応募条件」と「年収」
最もわかりやすい違いは、求人の応募条件です。日本の採用市場では、今でも「大卒以上」を条件にしている企業や職種が少なくありません。特に総合職、企画職、研究職、専門職、ホワイトカラー寄りの仕事では、大卒が前提になりやすい傾向があります。つまり、高卒だと能力以前に応募の土俵へ立ちにくいケースがあります。これは就職よりも、数年後の転職で実感しやすいポイントです。
年収面でも差は見えています。厚生労働省の2024年賃金構造基本統計調査では、一般労働者の学歴別賃金は高校288.9千円、大学385.8千円でした。また、新規学卒者の賃金でも高校197.5千円、大学248.3千円となっています。もちろん職種や会社規模で個人差はありますが、全体としては大卒のほうが賃金水準は高い傾向です。
この差は「最初の給料が少し違う」だけで終わりません。大卒は初任給が高いだけでなく、配属先、昇進ルート、管理職候補としての扱いで有利になりやすい企業もあります。その結果、20代後半以降で差が広がることがあります。
逆に言えば、高卒で働くなら、最初の会社選びを慎重にしないと、その後の年収差を埋めにくくなる可能性があります。就職先を選ぶときは、初任給だけでなく、昇給制度、資格手当、キャリアアップのしやすさまで見て判断することが大切です。
高卒でも不利になりにくいケース
高卒でも不利になりにくいのは、実務経験が評価されやすい仕事を選ぶ場合です。たとえば製造、インフラ、施工管理、設備保全、運輸、販売、介護などは、学歴よりも現場経験や資格、勤務態度が評価されやすい分野があります。高校新卒者向け求人倍率が高いことからも、企業側に一定の需要があることは読み取れます。特に人手不足が続く業界では、高卒採用を積極的に行う会社も多いです。
また、工業・商業・情報など、就職を意識した学科を出ている場合も比較的強いです。文部科学省の2025年3月卒業者調査では、高校就職率は全体で98.0%ですが、学科別では工業99.4%、商業98.8%、情報98.5%など高い水準でした。つまり、高校時代に進路をある程度絞って技能や知識を身につけている人は、高卒でも十分勝負しやすいといえます。
さらに、早く社会に出ること自体がメリットになる人もいます。高卒は18歳から収入を得られるため、22歳時点では4年分の実務経験があり、その間の収入もあります。大学4年間の学費や生活費が重い家庭にとっては、高卒就職が合理的な選択になることもあります。高卒が不利かどうかは一律ではなく、どの業界で、どの会社に入るかでかなり変わります。

大卒のほうが有利になりやすいケース
大卒の強みが出やすいのは、職種の入口で学歴が求められる仕事です。事務系総合職、企画、マーケティング、コンサル、研究開発、公務員の一部、専門資格と結びつく仕事などは、大学での学びや大卒資格そのものが武器になります。企業によっては高卒と大卒で採用区分が分かれており、初任給や昇進ルートが異なることもあります。こうした仕事を目指すなら、大学進学の価値はかなり大きいです。
また、転職を見据えるなら大卒はやはり強いです。最初の会社が合わなかったとき、求人票の「大卒以上」に引っかかりにくいからです。高卒で良い会社に入れれば問題ありませんが、もし最初の選択を外した場合、やり直しのしやすさは大卒のほうが高い傾向があります。これは「大学の勉強内容」よりも、採用市場の仕組みとして押さえておくべきポイントです。
加えて、賃金面でも大卒が有利です。新規学卒者の賃金だけ見ても、高卒197.5千円に対して大学248.3千円と差があります。一般労働者全体の学歴別賃金では、高校288.9千円、大学385.8千円でした。もちろん全員がこの通りになるわけではありませんが、長期の平均値として差が見える以上、「将来の収入を重視するなら大卒が有利になりやすい」と考えるのは自然です。

大学進学にもデメリットはある
ここで忘れてはいけないのが、大学に行けば自動的に勝ち、というわけではないことです。文部科学省によると、2025年度の私立大学(学部)の初年度学生納付金等の平均は1,507,647円でした。授業料だけでなく、入学料や施設設備費なども含めると、かなり大きな負担です。自宅外通学になれば、ここに生活費も上乗せされます。
奨学金に頼る人も少なくありません。日本学生支援機構の2026年3月公表資料では、大学学部昼間部で何らかの奨学金を受給している学生の割合は51.1%でした。つまり、大学進学は珍しくない選択ですが、同時に家計負担や返済負担とセットになりやすいのが現実です。進学するなら、「なんとなく4年間先延ばし」ではなく、その負担に見合う価値があるかを考える必要があります。
大学に行って後悔しやすいのは、学びたいことが曖昧なまま進学するケースです。目的がないまま進学すると、学費だけ重くなり、就活でも強みを作れず、「4年使ったのに何も残らなかった」と感じやすくなります。大学が向いているのは、将来やりたい仕事に必要、あるいは大学生活の中で経験を積む意志がある人です。進学そのものが目的になると、コスパが悪くなりやすいです。
高卒と大卒、どちらを選ぶと後悔しやすいのか
結局、後悔を減らすには高卒か大卒かの優劣よりも、自分の進路に筋が通っているかを見ることが大切です。特に後悔しやすいのは、進学や就職をなんとなく選んでしまった場合です。
高卒で後悔しやすいのは、本当はやりたい仕事に大学が必要だったのに、目先のお金だけで就職を決めた場合です。たとえば、後から「大卒資格が必要な会社に入りたかった」「事務や企画の仕事に行きたかった」と思っても、応募条件で不利になりやすいです。高卒就職を選ぶなら、就職後の資格取得やキャリアアップの道まで含めて考えておくことが大切です。
逆に大学進学で後悔しやすいのは、大学に行く理由が曖昧なまま、周囲に流されて進学する場合です。進学率が高い時代なので、「みんな行くから」という理由で大学を選びやすいですが、その先の職業イメージがないまま進むと、学費だけ重くなることがあります。進学が多数派でも、それが全員にとって最適解とは限りません。
感情論に振り回されにくくするには、次の3つで判断するのがシンプルです。将来やりたい仕事に大学が必要か、学費負担に見合う回収が見込めるか、高卒で入る会社に納得感があるか。この3つが整理できていれば、学歴のラベルよりも、自分に合った進路を選びやすくなります。
迷ったときの現実的な判断基準
迷っているなら、まず「大学が必要な仕事かどうか」を確認してください。医療、教育、研究、法律、理系専門職などは大学進学の意味が大きいです。一方で、現場系、販売系、インフラ系、技能系では高卒から経験を積む道も十分あります。進学の必要性は、世間体ではなく職種で決まる部分が大きいです。
次に、お金の見通しを具体的に考えましょう。私立大学の初年度納付金平均は約150.8万円で、4年間通えば大きな金額になります。奨学金利用者も多いため、学費を誰がどう負担するかを曖昧にしたまま進学すると後で苦しくなります。進学するなら、学費・生活費・奨学金返済まで含めてシミュレーションしておくべきです。
最後に、「どちらが楽か」で決めないことです。高卒就職は早く稼げますが、会社選びを外すとやり直しが難しくなることがあります。大学進学は選択肢が広がりやすい一方、目的がなければ費用負担だけが残りやすいです。どちらにも楽な道はなく、違う種類のリスクがあります。そのリスクを理解したうえで、自分に合うほうを選ぶことが重要です。

まとめ
高卒で働くことは、決しておかしな選択ではありません。実際、高校新卒者の就職内定率は高く、求人倍率も高水準です。一方で、長期的に見ると、応募条件、賃金水準、転職のしやすさでは大卒が有利になりやすい傾向があります。
だからこそ、「高卒は不利」「大学に行けば安心」といった雑な結論で決めるべきではありません。大切なのは、自分の目指す仕事に大学が必要か、進学コストに見合う価値があるか、高卒で入る会社に納得できるかを冷静に考えることです。進路は世間体で選ぶものではなく、人生の回収可能性で選ぶものです。



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